証の違いで処方を使い分ける
どんな症状?
食欲不振は、感染症や消化器の病気のほか、循環器や呼吸器の病気など、いろいろな病気が原因となります。なかでも、ストレスや抑うつ状態などの精神神経症状との関連が深く、妊娠、薬の副作用、急激なダイエットなども原因になります。
現代医学での診断・治療
原因となる病気が明らかな場合は、その病気の治療を行ないます。たとえば、薬が原因で食欲不振になっている場合は、薬の使用を中止したり、他の薬に変更したりします。
精神的ストレスが原因の場合は、心理的なサポートのもと、抗不安薬や抗うつ薬などを使用したり、心身を十分に休めるようにします。またダイエットが原因の拒食症も、こころとからだの双方からの治療が大切です。
漢方での診断・治療
がっちりした体型の人(実証)で、なんらかの病気が原因となり食欲が低下した状態には、実証の処方(瀉剤:体内の余分なエネルギーを取り除く処方)を用います。やせた人や高齢者、慢性の病気やがんなどの消耗性の病気があって食欲不振が持続し、体重減少や体力低下をともなう場合は、虚証の処方(補剤:エネルギーを補う処方)を用いて、体力の底上げを図ります。
こうした治療は、現代医学的診断・治療と相反するものではなく、全人的なアプローチである心身医学をベースとした相補的治療として有効と考えられています。
よく使われる漢方処方
五苓散/ごれいさん
片頭痛、口の渇き、悪心・嘔吐、腹痛、下痢、めまい、水を飲むわりに尿量が少ないなどの人。とくに吐き気が強く食べられないときに有効なことがあります。
虚実不問
特になし
小柴胡湯/しょうさいことう
みぞおちから右脇腹にかけての圧迫感。舌苔、口が苦い、吐き気・嘔吐などをともなう人。
虚実間証
インターフェロン製剤を使用している場合、肝臓の疾患がある場合は、間質性肺炎などを引きおこすことがあるので、併用不可。
半夏瀉心湯/はんげしゃしんとう
胃・みぞおち付近のつかえ感、悪心・嘔吐、腹鳴、軽い下痢、軟便などの症状がある人。
虚実間証
甘草、グリチルリチン酸およびその塩類を含む製剤との併用注意。間質性肺炎、偽アルドステロン症、ミオパチーの副作用。
平胃散/へいいさん
胃がもたれる、消化不良、慢性・急性胃腸炎、胃痛、食後の腹鳴、下痢などの症状がある人。
虚実間証
甘草、グリチルリチン酸およびその塩類を含む製剤との併用注意。偽アルドステロン症、ミオパチーの副作用。
十全大補湯/じゅうぜんたいほとう
倦怠感、顔色が悪い、皮膚の乾燥、貧血などをともなう人。慢性疾患・難病・進行がんなどによる体力低下、食欲不振、神経性食欲不振症によるるいそう(やせ)にも用いられます。
虚証
著しく胃腸の虚弱な人には慎重に用いる。
清暑益気湯/せいしょえっきとう
軟便、尿量減少、手足の熱感などをともなう、暑気あたりによる食欲不振の症状がある人。
虚証
甘草、グリチルリチン酸およびその塩類を含む製剤との併用注意。
人参養栄湯/にんじんようえいとう
顔色が悪く、全身倦怠感などをともなう人や、産後・病後に体力が低下している人の体力回復などに用いられます。
虚証
甘草、グリチルリチン酸およびその塩類を含む製剤との併用注意。偽アルドステロン症、ミオパチーの副作用。
補中益気湯/ほちゅうえっきとう
胃腸の働きが弱い、頭痛、悪寒、貧血ぎみ、腹部が軟弱でへそ付近に動悸を触れる人。
虚証
甘草、グリチルリチン酸およびその塩類を含む製剤との併用注意。偽アルドステロン症、ミオパチーの副作用。
六君子湯/りっくんしとう
胃腸が弱く、胃炎、胃下垂、つわりなどをともない、疲れやすい、貧血、手足の冷え、みぞおちのつかえ感、軟便ぎみの人など。
虚証
特になし


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